G-PDCAサイクル 関西経営品質賞 受賞組織 | 関西経営品質協議会
ホーム > 関西経営品質賞について > 関西経営品質賞 受賞組織 > 2024年度 関西経営品質賞 ゴールド「医療法人嘉健会 思温病院」

関西経営品質賞について

2024年度 関西経営品質賞 ゴールド

医療法人嘉健会 思温病院

設立 2014年
代表者 理事長 院長 狭間 研至 (はざま けんじ)
本社所在地 大阪府大阪市西成区松1丁目1番31号
売上高 2,129百万円(2024年3月)
従業員 193名(非正規社員含む)(2024年3月)
事業内容 病院
ホームページ https://www.shion-hp.or.jp
  • ・病院再建へと導いたリーダーシップと顧客価値の転換
  • ・徹底した理念浸透による組織風土の改革
  • ・外部評価や学会発表を通じた更なる医療の質向上と病院ブランドの認知拡大


医療法人嘉健会 思温病院(以下、思温病院と記載)は、大阪市西成区に病院を構えている。同区は区民の2割が生活保護者という特殊な環境下にあり、また将来の 人口推計も都市部の中で高齢化による人口減少が顕著な地域とされている。その中で同院は「一般急性期・回復期・慢性期」の3病期に対応し、高齢者の在宅復帰 のためのリハビリテーションや社会的環境整備なども含めトータルでサービス提供する。現在、入院患者の8割は外部紹介患者とされている。

同院の前身は設立40年を超える病床196床の民間の外科系救急病院であった。その際には不祥事が多く発生して患者は集まらず、地域では“入院したくない病院” という風評が出るほどの状態であった。転機は2014年の経営権の譲受で、2016年に病院名も刷新。2015年に入職した現理事長の狭間氏を中心に再建を進め経営破綻から 復活を遂げた。今では「奇跡の病院」とも呼ばれるようにもなり、他病院から見学者が訪れる状態に至る。

経営再建の途上では、まず戦略・事業計画・予算・部署別計画を一つの冊子にまとめた「ACTION PLAN」を作成して、病院運営のフレームワークを構築した。また、 職員が一丸となることを目標に理念の浸透にも着手し、思温病院「Faith」を作成した。作成後は院内の各部署でFaith朝礼を実施し、医師も例外に扱うことなく 参加させた。これにより組織風土も改善し、さらには「質の高い高齢者医療を提供する病院ブランドとしてNo.1になる」というビジョンを掲げてありたい姿を明確にして、 医師を含めた職員間のベクトルも揃っていった。一方で新型コロナウイルス感染症が広まった当時は病院の対応では、外来での診療や検査対応を当初に行っていたが、 病院としての社会的責任に応えるためのコロナ入院受入重点医療機関として運営を開始した。リスクも大きかったが、コロナの診療報酬や休床補償等も含めて、 譲渡後6年間で積み上がった10億円の累積赤字の一掃に成功し、財務状況が大幅に改善した。

またなかなか定まらなかった看護部長もようやく決まり、着任後は全看護部門職員と面談し、課題の把握、幹部会での問題共有、改善策提案をすぐに行い、 看護部門の変革も大きく前進した。

同院は2021年8月に日本版医療MB賞クオリティクラブ、JHQC(Japan Healthcare Quality Club)に加盟し、病院での経営の質の向上を図るための活動をスタートさせた。 その後2022年度 経営品質協議会の経営デザイン認証スタートアップ認証、2023年度 同認証 ランクアップ認証を受賞。活動も継続している。

●経営再建の実現につなげる顧客価値の転換やコロナ受け入れ対応
2015年に入職した現理事長含めた幹部が検討し、病院周辺の地域の将来の人口動態の変化や高齢化社会での医療ニーズの変化を捉え、また2001年以降の医療法で定める 1床当たりの病床面積にも適合させるかたちで病床削減と機能シフトを行った。具体的には「一般急性期・回復期・療養期」の3つの機能を備えて高齢者の様々な病期に 自院内で対応ができるトータルケア病院へと顧客価値を転換させた。

以前の経営体制での当院は、粗悪な診療や治験不正などの不祥事もあり、患者が集まらずに地域では“入院したくない病院”という風評も出るほどの状態であった。 この状況から現理事長のもと「質の高い高齢者医療を提供する病院ブランドとしてNo.1になる」というビジョンを打ち出し、そのために自院外来の縮小や紹介入院 中心の病院づくりを進め、積極的に患者の受け入れを行うことで、それまでの慢性的な赤字体質からも脱却した。その結果、2020年に経常利益で初の黒字化を達成した。

一方で、2020年初頭から猛威を振るった新型コロナウイルス感染症に対して、当初の要請では外来での診療・検査に従事していた。しかし同感染症の勢いが衰えず、 翌年には病院としての社会的責任に応えるために職員らを説得し、コロナ入院受入重点医療機関として運営を開始した。従全通リの一般入院受入とコロナ感染による 入院への対応を密に検討した上で、コロナの診療報酬や休床補償等によって、譲渡後6年間で積み上がった10億円の累積赤字の一掃に成功し、財務状況を大きく改善させた。

●理念浸透による組織風土の改革と独自に構築した病院管理のフレームワークの運用による組織力の強化
現理事長は当院の再建には組織風土の変革や職員がチーム一丸となって取り組むことが必要であり、理念の浸透が重要との考えに至った。そこで、思温病院ならではの 理念・価値観やホスピタリティをよりわかり易く具現化する思温病院「Faith」を作成し、全部署でのFaith朝礼をスタートさせた。

他院の朝礼では、医師以外の事務部・看護部・診療技術部などで行われている例もあるが、医師を例外とすることなく病院内の各部署で実施を進めた。はじめは病院の方針に 戸惑い退職する医師も出たが、粘り強く浸透に努めた結果、現在では組織風土の改善に結びつき、患者本位で考えることができる人財の育成や、多職種連携・チーム医療が 円滑に進み、今では当院の強みとなっている。

さらに看護部においては、2022年4月に入職した部長の強いリーダーシップによって変革活動が加速し、その想いに共感した看護管理者が入職して変革活動の推進を一緒に 進めていくという流れが出来始めている。

また、当院が掲げる“質の高い高齢者医療を提供する”ために、2017年から幹部会が、戦略・事業計画・予算・部署別計画を一つの冊子にまとめた「ACTION PLAN」を トップダウンで作成した。

これを、計画の実効性をより高めるために全部署長が集まるJHQC委員会で全員参加型のマネジメントツールとして「思温病院ACTION PLAN BSC」へとアップデートし、 朝礼・会議などでの活用や、LINE WORKSを用いて職員間の情報連携を行うなど、独自に構築したフレームワークを運用することで、組織力・チーム力の向上につながっている。

●顧客・外部機関評価の活用と、学会活動等への取り組みを通じた組織と職員の能力向上やブランド化
ありたい姿として「質の高い高齢者医療を提供する病院ブランドとしてNo.1になる」ことを掲げ、その実現に向けて組織の目を外に向けつつ客観性も担保するために、 患者満足度調査に加え、地域連携する医療機関など顧客や外部からの評価を取り入れ、病院団体が行う学会等での発表も行なっている。

さらに、外部専門第三者評価として、西成区で唯一認定を受けている病院機能評価の継続認定や、経営デザイン認証、関西経営品質賞などの取り組みも行いながら、 組織と個人の継続的な能力向上に注力している。これまでのトップダウン型での組織変革から、現場主導での業務改善が生まれ、ボトムアップ型の組織変革へと昇華して 取組みが行われている。

これらの活動の結果として、大阪病院学会では発表の8演題中2題が優秀演題として表彰を受けた。また日本医療機能評価機構による病院機能評価においても 2018年の審査から2023年の審査では大幅に評価結果が向上し、全国の模範となるレベルである最上位のS評価も5項目で取得した。また、経営デザイン認証・ ランクアップ認証を受審することでブランド化が進み、これまでの当院の取り組みの視察のために他病院から見学が相次ぐなど、ベンチマーキングの対象として位置づけられており、 経営破綻状態の当時と比較しても見違える状態となっている。

<< 「関西経営品質賞 受賞組織」一覧へ戻る

-本件お問合せ先 -
(公財)関西生産性本部 「関西経営品質賞事務局」
〒530-6691 大阪市北区中之島6-2-27 中之島センタービル28階
TEL:06-6444-6464 / FAX:06-6444-6450