G-PDCAサイクル
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医療法人嘉健会 思温病院(以下、思温病院と記載)は、大阪市西成区に病院を構えている。同区は区民の2割が生活保護者という特殊な環境下にあり、また将来の
人口推計も都市部の中で高齢化による人口減少が顕著な地域とされている。その中で同院は「一般急性期・回復期・慢性期」の3病期に対応し、高齢者の在宅復帰
のためのリハビリテーションや社会的環境整備なども含めトータルでサービス提供する。現在、入院患者の8割は外部紹介患者とされている。
同院の前身は設立40年を超える病床196床の民間の外科系救急病院であった。その際には不祥事が多く発生して患者は集まらず、地域では“入院したくない病院”
という風評が出るほどの状態であった。転機は2014年の経営権の譲受で、2016年に病院名も刷新。2015年に入職した現理事長の狭間氏を中心に再建を進め経営破綻から
復活を遂げた。今では「奇跡の病院」とも呼ばれるようにもなり、他病院から見学者が訪れる状態に至る。
経営再建の途上では、まず戦略・事業計画・予算・部署別計画を一つの冊子にまとめた「ACTION PLAN」を作成して、病院運営のフレームワークを構築した。また、
職員が一丸となることを目標に理念の浸透にも着手し、思温病院「Faith」を作成した。作成後は院内の各部署でFaith朝礼を実施し、医師も例外に扱うことなく
参加させた。これにより組織風土も改善し、さらには「質の高い高齢者医療を提供する病院ブランドとしてNo.1になる」というビジョンを掲げてありたい姿を明確にして、
医師を含めた職員間のベクトルも揃っていった。一方で新型コロナウイルス感染症が広まった当時は病院の対応では、外来での診療や検査対応を当初に行っていたが、
病院としての社会的責任に応えるためのコロナ入院受入重点医療機関として運営を開始した。リスクも大きかったが、コロナの診療報酬や休床補償等も含めて、
譲渡後6年間で積み上がった10億円の累積赤字の一掃に成功し、財務状況が大幅に改善した。
またなかなか定まらなかった看護部長もようやく決まり、着任後は全看護部門職員と面談し、課題の把握、幹部会での問題共有、改善策提案をすぐに行い、
看護部門の変革も大きく前進した。
同院は2021年8月に日本版医療MB賞クオリティクラブ、JHQC(Japan Healthcare Quality Club)に加盟し、病院での経営の質の向上を図るための活動をスタートさせた。
その後2022年度 経営品質協議会の経営デザイン認証スタートアップ認証、2023年度 同認証 ランクアップ認証を受賞。活動も継続している。
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